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二〇世紀「英国」小説の展開

(編著)高橋和久   (編著)丹治愛  

解説

20世紀英国小説研究の新しい傾向を踏まえつつ、「小説を読む」意味を問い直す。ヘンリー・ジェイムズからカズオ・イシグロまでの重要な作家の作品論を、幅広い世代の18人の論者が展開する。高橋和久による20世紀英国小説批評の大きな地図となる序論も読みどころ。

目次

モダニズムからポストモダニズムへ●高橋和久

1►ヘンリー・ジェイムズ『金色の盃』(1904)──二〇世紀初頭の印象主義●垂井泰子

2►ジョゼフ・コンラッド『シークレット・エージェント』(1907)──スパイ、印象主義、パラドックス●丹治 愛

3►E・M・フォースター『眺めのいい部屋』(1908)──観光とメディアのモダニズム/ポストモダニズム●浦野 郁

4►D・H・ロレンス『息子と恋人』(1913)──オイディプスとアンチ・オイディプス●倉田賢一

5►フォード・マドックス・フォード『善き兵士』(1915)── 信頼できない語り手と印象主義●川本玲子

6►キャサリン・マンスフィールド「幸福」(1918)──心理小説におけるゴシック的不安●侘美真理

7►ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』(1922)──第四挿話と腎臓を食らう男●桃尾美佳

8►ヴァージニア・ウルフ『幕間』(1941)──戦争の気配●片山亜紀

9►イーヴリン・ウォー『ブライズヘッドふたたび』(1945)──語りを動かすクィアなクローゼット●長島佐恵子

10►ジョージ・オーウェル『一九八四年』(1949)──歩くこと、階級、自由●河野真太郎

11►マーガレット・ドラブル『碾臼』(1965)──〈女性作家〉による〈フェミニスト小説〉の解剖●川崎明子

12►ジョン・ファウルズ『フランス軍中尉の女』(1969)──外来種と小説●大久保 譲

13►サルマン・ルシュディ『真夜中の子供たち』(1981)──ポストモダン/ポストコロニアルの異国性とノスタルジア●秦 邦生
14►アラスター・グレイ『ラナーク』(1981)──二〇世紀的叙事詩の形●猪熊恵子

15►ドリス・レッシング『夕映えの道──よき隣人の日記』(1983)──老いとケア●迫 桂

16►アンジェラ・カーター『夜ごとのサーカス』(1984)──フェアリー・テイル言説の再話●吉野由起

17►J・M・クッツェー『鉄の時代』(1990)──リベラル・ヒューマニストの身体はアパルトヘイトの痛みを感じることができるか●小山太一

18►カズオ・イシグロ『充たされざる者』(1995)──疑似古典主義の詩学●武田将明
あとがき●丹治 愛
人名・作品名索引

メディアほか関連情報

■『図書新聞』2020年6月13日に書評が掲載されました

専門性とリーダビリティの両立。その難題を、この本に収められた十八の論考のほとんどは難なくクリアしている。執筆者の選定に特定の研究者の教え子という縛りをかけながら、このクオリティ。(同志社大学文学部教授・下楠昌哉氏)

■『毎日新聞』2020年6月13日に書評が掲載されました

本書目次には、ジェイムズ(垂井泰子)、コンラッド(丹治愛)、ウルフ(片山亜紀)からイシグロ(武田将明)まで十八の作品論が並ぶ。本稿では、「失敗」と「未遂」というキーワードを頼りに、本論集の今日的な独創性を浮彫りにできたらと思う。(鴻巣友季子氏)

著者紹介
  • 高橋和久

    1950年生まれ。東京大学名誉教授。京都大学卒業、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。著書に『エトリックの羊飼い、或いは、羊飼いのレトリック』(研究社)、『別の地図──英文学的小旅行のために』(松柏社)、『ラドヤード・キプリング──作品と批評』(松柏社、共編著)。翻訳にアラスター・グレイ『哀れなるものたち』(ハヤカワepi文庫)、ジェイムズ・ホッグ『義とされた罪人の手記と告白』(白水Uブックス)、ジョージ・オーウェル『一九八四年[新訳版]』(ハヤカワepi文庫)、ジョゼフ・コンラッド『シークレット・エージェント』(光文社古典新訳文庫)、ピーター・バリー『文学理論講義──新しいスタンダード』(監訳、ミネルヴァ書房)など。

  • 丹治愛

    1953年生まれ。東京大学名誉教授。法政大学文学部教授。東京大学卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。著書に『ドラキュラ・シンドローム──外国を恐怖する英国ヴィクトリア朝』(講談社学術文庫)、『モダニズムの詩学──解体と創造』(みすず書房)、『文学批評への招待』(共著、放送大学教育振興会)。翻訳にヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』(集英社文庫)。

関連書籍
  • モダニズムとは何か

  • 英文学の内なる外部/ポストコロニアリズムと文化の混淆

  • ラドヤード・キプリング/作品と批評

  • 魔術師の遍歴/ジョン・ファウルズを読む

  • ジェイムズ・ジョイス事典

  • フィクションの言語/イギリス小説の言語分析批評〈言語科学の冒険5〉

  • フォークナー 第2号/特集「フォークナーと同時代人たち」

  • G・オーウェル研究/初期作品研究とエッセイ

  • モダンの近似値/スティーヴンズ・大江・アヴァンギャルド

  • D.H.ロレンス批評地図/フェミニズムからバフチンまで

  • しみじみ読むイギリス・アイルランド文学/現代文学短編作品集

  • 一九世紀「英国」小説の展開

  • スティーヴン・ヒーロー/『若い芸術家の肖像』の初稿断片

  • 百年の記憶と未来への松明(トーチ)/二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶

  • ゴシックと身体/想像力と解放の英文学