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しみじみ読むイギリス・アイルランド文学/現代文学短編作品集

(訳)遠藤不比人  岩田美喜  田尻芳樹  田村斉敏  片山亜紀   (編)阿部公彦  

解説

12篇の大人と子供の物語。各翻訳には訳者の解説付き。彼女の親の反対を押し切って駆け落ちした主人公のぼく。だが生活費がつきてくると二人の関係がにわかにくずれ始めるグレアム・スウィフトの「トンネル」。借金を繰り返す夫に苦労しながらも家庭を守る母親が、突然届いたきれいな敷物の送り主に淡い期待を抱きつつ探し始めるエドナ・オブライエンの「敷物」。十数年ぶりにアメリカから日本の生家に帰った主人公だったが、父親とのわだかまりが消えるどころか改めて浮き上がってしまうカズオ・イシグロの「ある家族の夕餉」など珠玉の12篇。

【重版に際して】

初版から13年、2020年12月に初めての重版となりました。この重版に際して帯には河野真太郎さん、鴻巣友季子さんの推薦のお言葉を戴きました!

目次

・「誰かに話した方がいい」 ベリル・ベインブリッジ著/阿部公彦訳
・「敷物」 エドナ・オブライエン著/遠藤不比人訳
・「奇妙な召命」 モイ・マクローリー著/片山亜紀訳
・「清算」 シェイマス・ヒーニー著/岩田美喜訳
・「ある家族の夕餉」 カズオ・イシグロ著/田尻芳樹訳
・「呼ばれて/小包/郊外に住む女―さらなる点描」 イーヴァン・ボーランド著/田村斉敏訳
・「ドイツから来た子」 ロン・バトリン著/遠藤不比人訳
・「トンネル」 グレアム・スウィフト著/片山亜紀訳
・「屋根裏部屋で」 アンドリュー・モーション著/田村斉敏訳
・「五月」 アリ・スミス著/岩田美喜訳 
・「はじめての懺悔」 フランク・オコナー著/阿部公彦訳
・「ホームシック産業」 ヒューゴー・ハミルトン著/田尻芳樹訳

メディアほか関連情報

■ 「英語年鑑」2009年版に掲載されました

短編のアンソロジーに、阿部公彦編『しみじみ読むイギリス・アイルランド文学』(松柏社,2007. 6)がある。「現代文学短編先品集」の一冊(ほかに平石貴樹編『しみじみ読むアメリカ文学』がある)で、ベリル・ベインブリッジからアンドリュー・モーションに至る12編の散文と詩が紡ぎだす「しみじみとした」物語が、翻訳と解説文を添えて提示される。選択がユニークで、まさにしみじみとした散文の味わいを楽しめる異色の編集である。(川口喬一=筑波大学名誉教授)

■ 「英語年鑑」2009年版に掲載されました

「しみじみ」をキーワードに、味わい深く読める短編を集めたもので、若い読者に対する文学への導入としてもよくできている。おもに気鋭の若手が訳者として名を連ねていることや、すでに絶版となっている名作短編が拾ってあるのも嬉しい。(上岡伸雄 =学習院大学教授)

■ 2007年8月5日 西日本新聞朝刊

現代の英国とアイルランドの短編小説、詩を十二編収録。思春期の少女 を語り手に、親たちとのコミュニケーションのすれ違いを描いた「誰かに話したほうがいい」(ベリル・ベインブリッジ作)、「ある家族の夕 餉(ゆうげ)」(カズオ・イシグロ作)など。

■ 「週間読書人」2007年7月20日号に掲載されました。

(前略)やはり「しみじみ」読めるのは、日常的な人間関係や内面の機 微を描いた短編作品である。無駄をぎりぎりまで削ぎ落とし、登場人物の内面の揺らぎや心の襞までをも浮かび上がらせることによって、あま りに人間的であるがゆえに抱かざるをえないせつなさ、やるせなさ、哀しさ、優しさなどを「しみじみ」と読者に伝えるには短編作品をおいてほかにないだろう。 (中略)アイルランド文学のエドナ・オブライエンの「敷物」、モイ・ マクローリーの「奇妙な召命」、フランク・オコナー「はじめての懺 悔」、シェイマス・ヒーニー「清算」は信仰と関連がある作品。ヒュー ゴー・ハミルトンの「ホームシック産業」は、アイルランドへの帰属拒 否そのものがアイルランドの文化的伝統への帰属となってしまうという パラドックスを描いた、きわめてアイルランド的な作品である。 イギリス文学のベリル・ベインブリッジ「誰かに話した方がいい」で は、七〇年代の思春期の少女を主人公に世代間のせめぎあいが描きださ れる。グレアム・スウィフトの「トンネル」も七〇年代に舞台が設定さ れ、さまざまな読みの可能性を呈示してくれる作品である。また、カズ オ・イシグロの「ある家族の夕餉」は無駄を極力省いた巧みな構成の作 品で、小津安二郎の映画を彷彿とさせる何度読んでも飽きない一編である。(木下卓=愛媛大学教授)

■ 東京新聞/中日新聞2007年7月1日に掲載されました

しみじみと泣く、くすりと笑う、切なくなる…。いずれも味わい深い珠玉の作品。訳者の解説も丁寧で秀逸だ。現代小説を味わう絶好の一冊。

著者紹介
  • 遠藤不比人

    1961年生まれ。成蹊大学文学部教授。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。博士(学術、一橋大学)。専門はイギリス文学・文化、文化理論。著書に『情動とモダニティ──英米文学/精神分析/批評理論』(彩流社)、『死の欲動とモダニズム——イギリス戦間期の文学と精神分析』(慶應義塾大学出版会)、『日本表象の地政学——海洋・原爆・冷戦・ポップカルチャー』(編著、彩流社)、『文学研究のマニフェスト——ポスト理論・歴史主義の英米文学批評入門』(共著、研究社)、『カズオ・イシグロの世界』(分担執筆、水声文庫)。訳書に、ジョージ・マカーリ『心の革命──精神分析の創造』(みすず書房)、トッド・デュフレーヌ『死の欲動と現代思想』(みすず書房)、レイモンド・ウィリアムズ『想像力の時制』〈文化研究 II〉(共訳、みすず書房)など。

  • 岩田美喜

    1973年生まれ。立教大学文学部教授。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。専門はイギリス・アイルランドの初期近代~近代の演劇。シェイクスピアを中心としたイングランド系劇作家と、ジョージ・ファーカーやR・B・シェリダンら18世紀アイルランド系劇作家。著書に『ライオンとハムレット──W・B・イェイツ演劇作品の研究』『兄弟喧嘩のイギリス・アイルランド演劇』(松柏社)、『イギリス文学と映画』(共編著、三修社)、翻訳に『しみじみ読むイギリス・アイルランド文学──現代文学短編作品集』(分担訳・解説、松柏社)、ジョージ・スタイナー『むずかしさについて』(共訳、みすず書房)。

  • 田尻芳樹

    1964年生まれ。東京大学大学院 総合文化研究科  教授。東京大学大学院博士課程中退、ロンドン大学Ph.D.。著書に『ベケットとその仲間たち──クッツェーから埴谷雄高まで』(論創社)、翻訳に『世界文学論集──J・M・クッツェー』『続・世界文学論集──J・M・クッツェー』(みすず書房)など。

  • 田村斉敏

    1965年生まれ。東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 教授。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。翻訳に『しみじみ読むイギリス・アイルランド文学──現代文学短編作品集』(分担翻訳・解説、松柏社)。

  • 片山亜紀

    1969年生まれ。獨協大学外国語学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学、イースト・アングリア大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。論文に「ヴァージニア・ウルフの視覚的ポリティクス」『〈見える〉を問い直す』(彩流社)。翻訳にヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』(平凡社ライブラリー)、『三ギニー ──戦争を阻止するために』(同上)、『幕間』(同上)、『ある協会』(エトセトラブックス)。

  • 阿部公彦

    1966年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。東京大学卒業。東京大学大学院修士課程、ケンブリッジ大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。現代英米詩専攻。著書に『モダンの近似値──スティーヴンズ・大江・アヴァンギャルド』『即興文学のつくり方』(松柏社)、『名作をいじる──「らくがき式」で読む最初の1ページ』(立東舎)、『英詩のわかり方』(研究社)、『文学を〈凝視する〉』(サントリー学芸賞受賞、岩波書店)、『幼さという戦略──「かわいい」と成熟の物語作法』(朝日新聞出版)、『史上最悪の英語政策─ウソだらけの「4技能」看板』(ひつじ書房)、『理想のリスニング──「人間的モヤモヤ」を聞きとる英語の世界』(東京大学出版会)、東京大学文学部広報委員会編『ことばの危機──大学入試改革・教育政策を問う 』(分担執筆、集英社新書)、訳書に『フランク・オコナー短篇集』(岩波文庫)、ダイナ・フリード『ひと皿の小説案内』(監修・翻訳、マール社)。

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