近代への反逆/アメリカ文化の変容 1880-1920/〈言語科学の冒険26〉
(著者)T・J・ジャクソン・リアーズ (訳者)大矢 健 (訳者)岡崎 清 (訳者)小林一博
判型 | A5判上製 |
ページ | 651ページ |
価格 | 5,000円(税別) |
ISBN | 978-4-7754-0165-1 |
Cコード | |
略号 | |
発売日 | 2010年4月5日 |
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- 解説
我々の時代に酷似したアメリカ世紀末を、フロイト、グラムシ、ヴェーバーを武器に歴史学の大家がラディカルに描く。カウンターカルチャーの残光のもと、アメリカ文明の悲劇に苦しんだ著者が分析する、反近代主義の栄光と挫折。訳注、伝記情報、訳者解説も充実した、必携の一冊。
- 目次
日本語版のための序文
ペーパーバック版のための序文
序文
謝辞
第1章 アンチモダニズムの起源──十九世紀後半における文化的権威の危機
1 日常化した責任回避のパターン──産業主義時代のアメリカにおける公式の近代文化
2 社会の危機──共和主義の伝統とラディカルな亡霊
3 現実感を欠いた都市──社会科学、世俗化、「重さのなさ」の出現
4 心の危機──神経衰弱症と心理療法的世界観の出現
第2章 職人の姿──アーツ・アンド・クラフツのイデオロギー
1 アメリカにおけるクラフト運動リバイバルの起源──リーダーたちとそのさまざまな受容
2 アーツ・アンド・クラフツ運動のイデオロギーにおける再活性化と変容──シンプル・ライフ、審美主義、教育改革
3 逆流したアンチモダニズム──工場、市場、合理化のプロセス
4 クラフト運動の理想の終着点
第3章 破壊的要素──近代商業社会と武勇の理想
1 家庭のリアリズムから「ほんとうの人生」へ
2 階級、人種、そして力の崇拝
3 武勇の理想の心理的利用──経験のカルトと《ほんもの》の自己の追求
4 武勇の理想の心理的利用──グイニー、ノリス、アダムズ
第4章 信仰の朝──近代における中世的心性
1 子供時代のイメージと人種・人類の子供時代
2 中世の誠意──上品に、そして強靭に
3 中世の活力──聖と俗のエロティックな結合
4 中世という無意識──セラピーと抵抗
第5章 美しき宗教──カソリックの諸形式とアメリカ人の意識
1 カソリック趣味の勃興──文化的権威と個人的な再生
2 芸術、儀礼、信仰──プロテスタントのジレンマ
3 アメリカのアングロ・カソリシズム──合法化と反抗
4 アングリカニズムの両極──クラムとスカッダー
第6章 父権制から涅槃へ──アンビヴァレンスのパターン
1 ヴィクトリア朝的アンビヴァレンスの問題──発端と解決
2 蓮と父──ビゲロウ、ロウエル、ロッジ
▷ウィリアム・スタージス・ビゲロウ
▷パーシヴァル・ロウエル
▷ジョージ・キャボット・ロッジ
3 審美的カソリシズムと「女性」の価値──ノートン、ホール、ブルックス
▷チャールズ・エリオット・ノートン
▷G・スタンリー・ホール
▷ヴァン・ウィック・ブルックス
第7章 息子としての忠誠から宗教的反抗へ──ヘンリー・アダムズ
1 青年時代初期── 一族のゴーカートであっちに、こっちに
2 夫、歴史家、小説家──アダムズの再生産力の危機
3 アンチモダンな探求──ナイアガラから聖母へ
4 父と母のあいだで 一 ──聖母、ダイナモ、天使のような博士
5 父と母のあいだで 二 ──アンチモダンなモダニスト
エピローグ
訳注人名索引
訳注
恵みのある場所を求めて 大矢 健
参考文献
原注
索引
訳者あとがき
伝記的補足情報一覧表- メディアほか関連情報
■ 「New Perspective」194号に掲載されました
本書のような書物にはよくあることだが、読者を試す、あるいはその書物に対する態度を決定するための試金石となる文章が随所に含まれている。たとえば次の箇所だ。「他のすべてを犠牲にして経済的進歩と『個人の成長』を追い求める社会において、保守的価値観はきわめて重要であり、資本主義を擁護する似非保守派にまかせておくわけにいかないほど貴重なものである」。(中略)著者の姿勢を端的に示すものと考えてよいだろう。これを読んで読者は首肯するか反発するか。(長尾主税 中央大学非常勤講師)
■ 「週刊読書人」2010年9月10日に掲載されました
(前略)したがって、こうしたジャポニスム勃興より一世紀ほどを経て全世界的にクール・ジャパンがもてはやされている現在、本書の邦訳の遅れはむしろ一定の妥当性を帯びているだろう。アメリカにおける中世主義が貴族主義や原始主義、反知性主義と連動しつつ近代民主主義の内部で脈々と生き延びてきた歴史は、アメリカという「帝国」を理解するのに不可欠な前提と確信するからである。(巽孝之 慶應義塾大学)
■ 「図書新聞」2010年7月31日に掲載されました
ある種のアンチモダンな運動として誕生したポストモダニズムがグローバルな文化的ヘゲモニーを変容させ、結局のところ純粋資本主義と消費文化を強化しているだけのように見える21世紀の今、私たちはもう一度リアーズの警鐘を真剣に汲み取る必要があるのかもしれない。(小林剛 関西大学)
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