松柏社

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読みくらべ世界民話考/庶民の豊かな想像力と集合的認識を読み取る

(著者)野中涼  

解説

読んで、比べて、学んで、味わう、刺激的・民話集。日常の喜びや嘆きや感動や願望のさまざまな経験から、ごく自然に涌きだした物語。民話を優れた文学作品と捉え、世界の各地から共通するテーマを三作ずつ集めた一冊。民話は、庶民の日常の喜びや嘆き、感動や願望などのさまざまな経験から、ごく自然に湧きだしたと言える。ここに傑作と思われる世界の民話70話を厳選し要約再話、テーマが似ている3話を23グループに分類した。グループごとの解説では、何世紀にもわたって人間が経験し獲得し蓄積してきた人生についての豊富な集合的認識を、一つひとつから読み取り読み比べ、発想や認識の方法の文化的な違いも考察していて興味深い。

目次

1. 素性の知れない者 鶴女房 【日本】/妖精の嫁 【ノルウェー】/妖精の騎士 【イギリス】
2. 無理やりな結婚 天人女房 【日本】/アザラシ女房 【アイスランド】/タニシ女房 【中国】
3. 変身する求婚者 蛙王子 【イギリス】/蛇婿 【ロシア】/ヒキガエル息子 【朝鮮】
4. いじめに挫けない者 サンドリヨン【フランス】/葉限【中国】/手なし娘【スペイン】
5. 夢の奇瑞 スウォッファムの行商人【イギリス】/幽霊床屋【スイス】/白いロバ【バーバリー地方】
6. 運まかせの人生 わらしべ長者【日本】/運のいいハンス【ドイツ】/間抜けのジャック【イギリス】
7. 超自然の援助者 竜宮童子【日本】/エイキン・ドラム【スコットランド】/靴づくりの妖精【ドイツ】
8. 金銭の魅惑 レプラコーン【アイルランド】/宝の洞穴【中国】/福の神【クロアチア】
9. 富裕と清貧 貧乏神【リトアニア】/魔法の瓶【ポーランド】/貧乏な靴屋【スペイン】
10. 得する者は損する けちな男と大様な男【イスラエル】/金持ちマルコ【ロシア】/年画の黒いロバ【中国】
11. 匿名潜行 隠れ蓑【日本】/鬼の藁帽子【中国】/魔法のターバン【トルコ】
12. 異類言語の知識 聴耳頭巾【日本】/縞蛇の息【アルバニア】/動物ことば【イタリア】
13. 他者への配慮 小間使いの娘【イギリス】/不思議な指輪【インド】/うそ袋【バレアス諸島】
14. 亡霊、幽霊、怨霊 幽霊屋敷【アメリカ】/棺桶のふた【ロシア】/悪霊の恋人【イギリス】
15. 嘘、嘘、嘘、嘘 頭に柿の木【日本】/嘘の褒美【イスラエル】/ナジ・ヤーノシュの話【ハンガリー】
16. 愚か村のお人好し ケルムの賢人【ポーランド】/ゴータムの利口馬鹿【イギリス】/シュヴァルツェンボルンの村人【ドイツ】
17. トリックスターの手管 末息子は泥棒【メキシコ】/盗みの腕くらべ【コーカサス】/泥棒名人【アイルランド】
18. 詐欺師の良心 星占いのならず者【ミャンマー】/医者になった靴屋【ハンガリー】/占い師になった商人【ペルシア】
19. 冒険に挑む者 なら梨とり【日本】/命の水と若返りのリンゴ【ロシア】/銀の鼻【イタリア】
20. 息災延命の教訓 出稼ぎアイヴァン【ウェールズ】/悪魔の宿屋【コルシカ島】/父親の教え【スペイン】
21. 異郷の神秘性 地蔵浄土【日本】/飴人形【中国】/サンドフレーサの島【ノルウェー】
22. 自然・摂理・運命 阿呆人形【アルプス】/ムリーレの話【アフリカ】
23. 時間の神秘性 浦島太郎【日本】/王質爛柯【中国】/アシーン王子・ハーラ王【ケルト】

メディアほか関連情報

■ 「日刊ゲンダイ」2017年12月9日に掲載されました

人から人へと語り継がれてきた民話には、世界各地で共通するテーマが見られるという。本書は、「無理やりな結婚」「変身する求婚者」「運まかせの人生」「金銭の魅惑」「詐欺師の良心」など、共通する23のテーマを挙げて、世界にどんな民話があるのかを紹介した意欲作。

 

■ 「毎日新聞」2017年11月12日に掲載されました

例えば「素性の知れない者」のテーマでは、日本の「鶴女房」、ノルウェーの「妖精の嫁」、イギリスの「妖精の騎士」を紹介。どれも「結婚を主題にした話」で、「聞き手には、現実的に慎重であるようにと警告する教訓を含む」、「なかでも素性の知れない求婚者が現れると、たいてい謎めいた魅惑と危険が伴う不安を感じさせる」と解説される。

 

■ 「東京新聞」2018年1月7日に掲載されました

どの章でも、三つの話が語られる。はじめの話から連想して、つぎの話、つぎの話と語るのは著者なのに、私自身のなかで連想が起こるように思うのはどうしてか。日本の話以外は知らないものばかりなのに、よく知っている話のようにも思えるのだ。(宮川健郎 児童文学研究者)

 

■ 「出版ニュース」2018年2月下旬号に掲載されました

本書は、傑作と思われるという70話を選んで要約再話を試みたもので、テーマが似ている話を世界各地から三作ずつ集めたグループを作成して収録。グループは「1 素性の知れない者」から「23 時間の神秘性」までの23グループ。読みくらべることで世界各地の民話の〈発想方法や認識方法の文化的なちがい〉を考察することもできる。

著者紹介
  • 野中涼

    1932年、栃木県生まれ。早稲田大学名誉教授。1960年、早稲田大学大学院文学研究科英文学専攻博士課程修了。専攻は現代英米文学、比較文学。著書に『小説の方法と認識の方法』(松柏社、1970年)、『アイリス・マードック』(研究社、1971年)、『ブロンテ姉妹』(冬樹社、1978年)、『歩く文化座る文化──比較文学論』(早稲田大学出版部、1993年)、『文学の用語』(松柏社、2015年)、『読みくらべ世界民話考』(松柏社、2017年)など。

関連書籍
  • お伽話による比較文化論

  • 小説の方法と認識の方法

  • 文学の用語