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クローテル/大統領の娘  アメリカ古典大衆小説コレクション10

(著者)ウィリアム・ウェルズ・ブラウン

(訳)風呂本惇子
(解説)風呂本惇子

元奴隷の「アメリカ黒人の手による初の長編小説」、待望の本邦初訳。第3代アメリカ合衆国大統領トマス・ジェファソンと混血奴隷との間に生まれた美しい二人の娘クローテルとアルシーサの壮絶な運命を描いた衝撃の「架空の物語」。今でこそ映画や小説でジェファソンの異種族間恋愛はおなじみだが、奴隷制廃止の十年も前に元大統領の実名を用い、独立宣言起草者が奴隷所有者であるという矛盾を突いたこの物語は実に果敢な挑戦である。

四六判上製

297頁

3240円(税込)

978-4-7754-0039-5

2015年2月25日

   

■ 「週刊読書人」2015年5月15日付に掲載されました

第十五章に「不正義が主要な特徴であるような社会、主人と奴隷という二つの階級に分かれた社会、そんな社会でどんな社会的美徳があり得ようか」というくだりがあるが、不正な法体系に縛られた社会では自由も美徳もないと本書は弾劾する。人を平等に扱うのが法律であるのに、奴隷制とはその人を不平等に扱うことを規定した法律で、十九世紀アメリカで法と秩序に従って生きるなら、奴隷に明日はない。となれば、既成の法と秩序ではなく、真の法と秩序は何かを自ら考えださなければならない。ブラウンは、なにものにも縛られない真の自由と美徳は何かを徹底して追究する。これは現代社会にも通じるテーマである。
(木内徹・日本大学教授、アメリカ文学専攻)

■ 「黒人研究」84号、2015年に掲載されました

『クローテル』において、奴隷制をめぐる葛藤は、奴隷制に反対する白人女性ジョージアナや、その父で奴隷制擁護者のジョン・ベックのような典型的人物の間で交わされる議論として社会的に構成されている。議論は、「人間の作った制度」と「神の造りたもうた自然」を対置させるが、その境界は、ハックがそうであったように、奴隷制に対する考え方で変わってくる。議論を聞くカールトンが説得されることで、ジョージアナが勝利を収めたように見えるが、その間も屋敷の外では、奴隷たちの悲劇的な人生が続いている。
(平尾吉直)

■ 「赤旗」2015年3月1日付に掲載されました

作品はクローテルたちのストーリーをたどるだけではない。当時の公文書、詩歌、新聞雑誌記事、牧師の説教、政治家の演説など、他者の言説を縦横無尽に取りこんで交錯させ、奴隷制擁護論の自家撞着をときには辛辣なアイロニーによって鋭くつく論陣を張ってもいる。そのために、現代文学の一部に見られるような混成的テクストになっており、ことのほかモダンな文学実験に通じているともいえよう。
(村山淳彦・東洋大学教授)

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